2月 09, 2010

たいせつな人と、たいせつなゴハン 「彼女のこんだて帖」

2月 09, 2010

中華ちまき。手作りピザ。手作りうどん。五目ちらし。かぼちゃの宝蒸し。ラムのハーブ焼き…。
それはそれはおいしそうな、15のこんだてレシピと、15の切ない物語。

失恋の悲しみを、肉厚のラムステーキといっしょに飲み下そうとすろ女の子。亡き妻を、得意料理だった豚柳川なべをひとり食べながらしのぶ、初老のコンビニ店長。片思いから不健康なダイエットで元気をなくした女子高生の妹を、手作りピザで元気付ける兄。…

みんな少しづついろんなことがうまく行かなくて、でもいっしょうけんめい生きている。そんなとき、おいしい食べ物があれば、とってもうれしい。ちょっとずつ、元気になれる。それは食べものの魔力。
いっしょに食事をしてくれる、恋人や家族、友だちのあたたかさ。

そんなことを感じさせてくれる、15の切ない物語と、15のレシピ。

以下は特にしんみりとした、「かぼちゃのなかの金色の時間」から少々。

夫と別れ、女手ひとつで長男を育て上げた主人公。
毎日、働きづめだった。十分にかまってあげる時間もなかった。
主婦の買い物姿を見るたびに、彼女は思う。

「子どもに手作りのごはんを作ってあげられる母親、母親のごはんを食べられる子どもたち。
 なんて、なんて幸せな」

そんなある日、見知らぬ女性から電話がかかってくる。なんと息子の恋人らしい。
「…お母さんのかぼちゃのお宝料理がすごくおいしかったっていつも言ってるんで、
 今度の誕生日、練習して、作ってあげようと思って」
ぜひ作り方を教えて欲しいという。そういえば、年に一度、誕生日ぐらいは、と
手作りしていたことを思い出した。

レシピを説明しながら、彼女は涙をこらえた。。

「なんにもしてあげられなかったと思っていた。…おふくろの味なんか知らない大人にさせてしまったと思っていた。…そうじゃなかった。私たちにも、幸福な思い出があった。」
「大きな蒸し器で蒸す丸ごとのかぼちゃ。ケーキのように切った一切れ。
 やったー、お宝料理だとはしゃいだちいさな晶。」
「私の作った料理を、覚えてくれている。その味を、知っていてくれる。
 私と過ごした時間を、きちんと抱えてくれている。私たちにも、たしかに光り輝く黄金色の時間があった。」

ひとつひとつの食事を、もっと大切にしよう。
いつかその味とともに、大切な人たちとすごしたひとときを、
ちゃんと思い出せるように。
そんな、あたたかい気持ちにさせてくれる、やさしい物語集です。


※レシピは本格的。
ほんとうに、おいしく作れますよ。
自分でも、さっそくミートボール入りトマトシチューを作ってみた。
ミートボールも、もちろん手でまるめて。
こどもたち、ぱくぱくと食べてくれた。

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