3月 31, 2010

なんとかなれ

3月 31, 2010 0
荒れた夜空。でも、遠くに、かすかに、春の気配。
なまめかしい夜。

ここのところ、いろんなことが、また上手くいかない。
胸の奥んとこが、ささくれ立って。
最近、無性に古いフォークを聞きたくなることがある。



何とかなれ 古井戸

(歌詞)
やせがまんばかりで
もう半年過ぎたが
何が変ったか
誰を愛したか
頭の中で今夢がくずれだした
何とかなれ

やぶれかぶればかりで
もう半年過ぎたが
何が変ったか
誰を愛せたか
頭の中で今夢がくずれだした
何とかなれ
何とかなれ

何とかなれ
何とかなれ
何とか…
酔っ払いながら、一晩中、叫んでいたい
何とかなれ
何とか…
この祈り、どこかに届くなら。

3月 30, 2010

自由になるんだ Sting

3月 30, 2010 0




1981年!
無敵のスティングです。

いろんな人たちがいっしょにプレイしている。
ボブ・ゲルドフ、フィル・コリンズ。
テレキャスを弾いてるのは、もしかしてジェフ・ベック?

すごいポジティブな解釈。
「いつか」自由になるんじゃなくて、
「いま、たったいま」、もう、すぐにでも、まさにこの瞬間に、
俺は自由になるんだ。なれるんだ。

そんな、とてつもないパワーを感じます。

スティングは無敵です。

3月 29, 2010

ディラン 俺は自由

3月 29, 2010 0
 本家の名演です。


やっぱり、誰もこの人のようには歌えないですね、、
ワン・アンド・オンリー。
自分でも訳してみました。
[I shall be released. 歌詞と訳詞]
They say everything can be replaced,
かけがえのないものなんて、なにもないさ
Yet every distance is not near.
どこに行くにしたって、かんたんじゃないさ
So I remember every face
俺はおぼえてるぜ やつらの顔を
Of every man who put me here.
俺をこんなふうにさせた やつらの顔を
I see my light come shining
あたたかな光がやってきて 俺を照らしてくれる
From the west unto the east.
西から 東へと
Any day now, any day now,
今すぐに、今こそ
I shall be released.
自由になるんだ
They say every man needs protection,
誰もが護られるべきだと人は言う
They say every man must fall.
誰もが終わっていくものだとも
Yet I swear I see my reflection
でもたしかに俺は見たんだ
Some place so high above this wall.
この困難をはるかに越えた 高みにいる自分の姿を
I see my light come shining
あたたかな光がやってきて 俺を照らしてくれる
From the west unto the east.
西から 東へと
Any day now, any day now,
今すぐにでも、たった今からでも
I shall be released.
俺は自由になってやる
-----------------
free とbe released の違いはどこにあるのでしょう。
後者のほうが、若干「束縛や抑圧からの解放」というニュアンスが強いのかも知れない。
(Webster's
 release: to set free from restraint, confinement, or servitude
  抑圧、拘留、自由の束縛から自由になること)
また、will be でなくて shall be と言っていることからも、
単なる願望や予想などではなく、
「自由になってやる」という自らの強い意志が感じられます。
どんな束縛や抑圧からも、
俺は自由だ。
やつらがどんな手段で俺を押さえつけようとしたって、
俺は自由だ。
今すぐに、いやたった今、この瞬間から、
俺はすべての束縛から自由になれるんだ。

なんて強いメッセージでしょう。
内外を問わず、世界中のアーティストがカバーする気持ちが
すこしだけわかりました。

3月 28, 2010

be released 友部正人&真島昌利

3月 28, 2010 0


君が言うようには なかなかならないね
何かに近づいたとは とても思えない
そうさ 思えば俺がここまでやってきたのも
みんな みんな きみのおかげなのさ

俺の光を見つけたよ
西から東へと広がって行く
あんな陽にいつか俺も
自由になれるのさ

哀しい群集の中に俺といて
自分じゃないと叫ぶやつ
俺ははめられたんだ、というあの声が
一日中耳から離れない

俺の光を見つけたよ
西から東へと広がって行く
あんな陽にいつか俺も
自由になれるのさ

友部正人さんの、どこまでも透明な歌声は
この国の貴重な財産だと思う。
国宝指定にしてもいいくらいだ。

大塚まさじさんとはかなり違って、
多少直訳寄りだけれども、
やはりこの人でなければ
生まれなかった「I shall be released」だと思う。

3月 26, 2010

I shall be..清志郎×chabo

3月 26, 2010 0


アタマの悪い奴らが
圧力をかけてくる
あきれてものが言えない
またしてもものが言えない

権力を振り回す奴らが
またわがままを言う
俺を黙らせようとしたが
かえって宣伝になってしまったとさ


日はまた昇るだろう
このさびれた国にも(でたらめな国にも)
いつの日にか いつの日にか
自由に歌えるさ


はめられて消されたくはない
好きな歌を歌って
いろんなところに行って
見てきたものを歌うだけさ

---------------------------------------------
発禁処分に抗議するかたちで
最初は書かれたのだろうか。
でも、もっと普遍的な怒りを、
まさにプロテストを表現

男らしいってわかるかい



変わっていくなんて きっとないよ
君の世界なんて 程遠いよ
でも 俺をこんなに変えてくれた
昔の友がいるんだ

朝日はもう昇るよ
少しずつだけどね
そのとき その日こそ
自由になるんだ

男らしいって わかるかい
ピエロや臆病者のことさ
俺には聞こえるんだ 彼らの
おびえたような 泣き声が

朝日はもう昇るよ
少しずつだけどね
そのとき その日こそ
自由になるんだ
---------------------
ディランⅡを初めて聞いたときの衝撃は忘れられない。
「 I Shall be Released 」
ボブ・ディランの歌が、こんなに胸にささる
日本語で歌われるなんて。

何度も、何度も聞いた。
彼らの歌声は、さりげなく、静かで、
深く、熱かった。

かなわぬことだけれど、
彼らのように歌ってみたかった。

3月 24, 2010

ほうれん草のシチュー

3月 24, 2010 0


最近のお気に入り、Mr. David Choi。
一瞬イタい人に見えるけど、すばらしいシンガーソングライターです。
これなんて、名曲だよ…。「Use Somebody」  

オリジナルもいいけど、アル・グリーンとかのカバーも抜群。


David Choi さんのtwitter はこちら。
http://twitter.com/davidchoimusic  
さあ、レッツ・ふぉろー。

3月 19, 2010

Of はそんなにいいか?

3月 19, 2010 0
中2の長男が英文法で悩んでいるのを見て、思い出したこと。


語学書の編集をやっていたころ、
部下に「文法オタク」がたくさんいた。

編集者が「オタク」になってしまうのはいかがなものか。
テーマについて「大好き」であることは大前提だけれど、
ある程度のクールな距離感というか、客観性が必須なのではないか。

…と、自分では思うのだけれど、実際みんなオタクだったのだから、しかたがない。
どのへんがオタクかというと、
文法を詳細に知っているとか、
用例に異様にくわしいとか、ではなくて、
(もちろんそういう面もありつつ、なのだけれど)

文法や語法自体をまさに「愛している」という感じなのだ。

「グラマー・ラブ」というか。


少々「偏愛」方向に走っているところがあって、
あまり気持ちよくはない。。

たとえばこんな会話。

「of はいいよね」
「いいね」
「あの語感とかさ、たった二文字できりっとしてるとことかさ」
「おお、おお」
「熟語になったときの、たたずまいとかね」
「コロケーションもね」

「おお、おお」
「of じゃなきゃありえないよな」
「やっぱ of だよ。最高だよな」

…前置詞ひとつで、そこまで盛り上がるか。
二文字でそんなにいいなら、
betweenとかだったらどうなる。
「betweenって、いいよね」
「泣かせるよな」…
一晩中語りあかせるのかしら。

あるいは世界で一番長い英単語なんかだったら。
「あのLLANFAIRPWLLGWYNGYLLGOGERYCHWYRN…」
「でもLLANFAIRPWLLGWYNGYLLGOGERYCHWYRN…の気持ちになってみたらさ…」
おそるべし、文法オタク。

今はその編集部も解散して、もう会うこともないけれど、
聞くところでは文法オタクどうしで結婚したやつらもいたとか。

of が取り持つ仲だったのだろうか。

3月 18, 2010

シャイニン・オーン ~

3月 18, 2010 0
 きょうは LOOK です。
「シャイニン・オン 君が哀しい」
ああ、懐かしい。









ロックのブログやってるくせに、
どうも最近は80年代の邦楽ばっかり
追っかけてるな~。

ボーカルの鈴木トオルさん。
やっぱりこの人の歌声が、ずばぬけてる。
シャイニン・オン 君が哀しい (歌詞)
シャイニン・オン 星も見えない夜に
君の姿 浮かんで消える


高くて、しゃがれてて、
ピッチなんか微妙にゆれたりしててるんだけど、
なんというか、すごくハートへの届き方が深いよね。
一声で世界をガラっとかえてしまう、力技、パワー。
いきなりこんなに、全存在をかけて向き合われたら、
どうしようもないじゃない。目をそらせるなんて、できないじゃない。
身も心も、ゆだねるしかないじゃない。


昔からこの曲だけは、BGMにできなかったな。
聞き流す、ってことが、できなかった。


シャイニン・オン 思い出の砂浜を
浮かべるたびに また涙があふれる だから
シャイニン・オン せめて表向きだけ
今も君を忘れはしない
LOOKは割りと早く解散して、トオルさんもソロになったのだけど、
今でも全然元気で、現役でがんばってるらしい。
http://www.the-musix.com/tohru/index.html
http://www.the-musix.com/tohru/toru_voic.html
うれしくなるなあ。
なんとなく一発屋、って感じがしてたけど、
今回調べてみたら、大好きだった曲がたくさんあったのを思い出した。
↓こんなのや
「追憶の少年」↓こんなのとか
「サヨナラ イエスタデイ」




↓あと、こんなのもあった。
「祈り」(ソロ?)


どうもPVのつくりには恵まれてないような気がするけど、、
どの曲も、構成、メロディ、歌詞、すべてすばらしい名曲ぞろいだと思います。

3月 17, 2010

ジャーニー 不滅のラブバラード

3月 17, 2010 0
1996年、ジャーニー再結成時のヒット曲、「When You Love a Woman」



ええ曲です、、

反省しました。ジャーニーの大ファンだ、なんて言っておきながら、自分にとってのジャーニーは「Raised on the radio」で終わっていました。

そのころからかなあ。考えてみればちゃんとレコードを買って、真剣に音楽を聴くこと、向き合うこと、減ってしまった。日々の泡に飲まれ…。

でも、この人たちはちゃんと続けていたんですね。86年の解散後、実に10年を経て再結成、こんなにすばらしい曲を世に送り出していた。

ほんとうに頭が下がりました。反省しました。なにか、涙なしには聞けません。ええ曲です。。。

「When You Love a Woman」
歌詞と訳詩

 When you love a woman
 You see your world inside her eyes
 When you love a woman
 You know shes standin by your side
 A joy that lasts forever
 Theres a band of gold that shines waiting somewhere...oh
 It's enough to make you cry
 When you see her walkin by

 (彼女を愛するとき)
 瞳に映る自分が見えるかい
 (彼女を愛するとき)
 そっと寄りそう彼女を感じるかい
 この歓びは いつまでも終わらない
 どこかでじっと輝くのを待っている黄金の指輪
 なぜか泣けてくるんだ 彼女が近くにいるだけで…

(訳詩:発行人)

3月 16, 2010

おいしいイディオム?

3月 16, 2010 0
今日は「ケーキ」に関するイディオムです。Yum-Yum!!

★a piece of cake
→「とってもカンタンな」


ケーキ一切れをぺろりと食べるほどカンタンな、ということですね。
でもアメリカのケーキって大きいし、だからみんな太るんじゃないかなあ。
ex) It’s a piece of cake for me! (そんなのカンタンさ!)

★nutty as a fruitcake
→「イカレてる、変わってる」


nutty は「木の実の味の」。木の実味のフルーツケーキってだけでそうとう変わってますが。
実はnutty は俗語で「crazy」、fruitcake も「アタマがおかしかったり、変な振る舞いをする人」という意味があるのです。両方合わせたら、こりゃだいぶヘンですよね…。
ex) His idea is nutty as a fruitcake. (あいつの考えはカンペキにおかしい)

★cake eater
→「女たらし」

★cake shop
→「ケーキ屋さん」のほかに「売春宿」


どちらも「おいしいもの」だからねえ。(これ以上自粛)

3月 14, 2010

風味絶佳

3月 14, 2010 0

「世に風味豊かなものは数多くあれど、その中でも、とりわけ私が心魅かれるのは、人間のかもし出すそれである」(著者あとがき)

「風味」とは「飲食物の香りや味わい」、
「絶佳」とは「(風景などが)すぐれて美しいこと」。
「眺望絶佳」などと使うらしいけれど、本書のタイトルは「風味絶佳(ふうみぜっか)」。
装丁も、なつかしくもおいしそうなミルクキャラメルがモチーフです。

官能的(必ずしも性的、という意味ではなく、五感に効く)小説といえばこの人、山田詠美。実は私、デビュー作の「ベッドタイムアイズ」からずっと彼女のファンです。
人間のいとおしさをやさしくたたえるそのまなざしには、とても惹かれるものがあります。

デビュー当初は黒人との性愛というテーマが多く、かなりセンセーショナルな扱いをされたけれど、ことさらにそのシチュエーションを描くことがなくなっても、彼女はすばらしい作品を数多く産み出し続けています。

2005年5月初版のこの短編集のテーマは「肉体の技術をなりわいとする人々」。
鳶、貯水槽清掃業、引っ越し業などの「なりわい」をもつ主人公たち。それぞれにとても魅力的な彼らの風味を作者は「咀嚼しながら」、6つのチャーミングな短編に仕上げています。いずれも「巧い!」とうならざるを得ないようなできあがりです。

表題作「風味絶佳」で、福生でバーを営む「グランマ」の決めぜりふ、「恋人は必需品だよ」があまりにもカッコいい。。ぜひご一読を。おすすめです。


ところでいまさらですが、どうも、映画にもなっていたらしい。

なんとあの沢尻エリカが主演。
そして「グランマ」役には夏木マリ。これはナイスはまり役。
(読んだ人にはわかる)
これはぜひビデオも見なければ…。

3月 13, 2010

すごいストリート・ライブ

3月 13, 2010 0
な、なんだこれは~、、、
キャンディ・ダルファーとシーラ・Eが、いきなりストリートでライブをはじめます。




ちゃんと「グラマラス・ライフ」やってますが、大うけ。拍手喝采。帽子にはたくさんの投げ銭が。そりゃそうだよなあ、こんなライブ、見てみたい。新宿ガード下とか、渋谷109前とかでやらないかなあ。(無理か)

どうもこの二人、仲がいいようで、「SAX A GO GO!」とか、
こんな感じでホントのライブでもご一緒してます。
すごいや。

あと、こんなのも!(これはすごい…)


押尾コータロー HARD RAIN

<
友だちが好きでよくコピーしてまして、前からちょっと気になってました。

今回はじめてじっくり見たのですが、すごいですね、この人。

こういう、ハーモニックスとオープンチューニングを多用した、いわゆるピポパポ系のアコースティックギタープレイヤーって何人かいますけど、ちょっとずば抜けてますね。メロディもテクニックもいいけど、やっぱりノリがすごい。ちゃんと「バンド」やってますね。

特にこの曲のドライブ感なんて、ほんとに気持ちよさそうだもんなあ~。聞いてても、思わず腰が…。

あと、やっぱり音がいいですね。ギターって、こんなに鳴るんだあ、って改めて思いました。

ちなみに、この曲のチューニングは「GGDGGD」らしいです。

3月 10, 2010

レイアウト 変更 

3月 10, 2010 0
ブログのレイアウトを変えました。
「City Sleeps」ってのにした。また変えるかも、ですが。

3月 05, 2010

イディオムってなに???

3月 05, 2010 0
イディオム(idiom) って言うと
「『熟語』でしょ。受験の時に覚えたなあ。look after とかget backとか」
って方が多いと思いますが、ちょっと違うような気がするなあ。それは単に動詞句では?

イディオムの定義は「単語がいくつか集まって、もとの語の意味とは違う意味となるもの」。
ネイティブとの会話ではイディオムがとてもたくさん出てきて、単語だけの知識しかないと「??」となることが多いのです。洋画を見ててもホントにたくさん出てくる。

逆にイディオムをうまく使うことができると、会話にぐっとネイティブっぽさが出てきて、「この日本人なかなか…」となることもあります。

こんなに大事なのに、日本の学校教育ではなぜかイディオムをほとんど教えないのですね。私もほとんど知らなかった。

例えば、こんなのわかりますか?
(1)hot as hell
(2)blew his top
(3)Let's call it a day
   ↓   ↓   ↓
(1) 「暑いっ!!」地獄のように暑い、ってこの辺はカンタンかな?
(2) 「激怒する」top アタマを吹き飛ばすって感じかな。目に見えるよう
(3) 「今日はこの辺にしましょう」仕事の終わるときなど。これをもって一日と呼ぼう、ということですね。今日も終わった、やれやれと。

どうですか? おもしろいでしょ? 私はこういうイディオムを知ると、ネイティブのものの考え方や感じ方、ほの見える背景文化などを思って、へえボタン連打状態となるのです。

面白いイディオムを見つけたら、このブログにアップしていきます。みなさんもぜひバックしてください。イディオム百科を作りましょう!!

3月 02, 2010

バンド・オブ・ザ・ナイト

3月 02, 2010 0

巨匠中島らもの「バンド・オブ・ザ・ナイト」。

これはすごいよ。
ものすごい才能×ほんまもんのジャンキー、この掛け算でないと生み出せなかった傑作。
ほのぼのもありつつ、ウィリアム・バロゥズでもあり、
村上龍やDragon Ashでもある。

たとえば、「ロックンロール」を定義する試みのパッセージ。


セックスはロックンロールだ。寒いベッドのなかで、おれが君の小さな唇に口づけするとき、小さな火が夜の中に点る。それがドラムのカウントだ。やがてはじまる熱い前奏。唇が君の体をさまよい歩く。温かく濡れた君の性器、マイクスタンドのようなおれの性器、やがて律動が始まる。脳みそがぶっ飛ぶような快感とエンディング。セックスはロックンロールだ。 接吻はロックンロールだ。最初は小鳥のように、やがて激しく舌のたわむれがあって、おれは君の腰を抱き寄せる。君の頭蓋骨ごと吸い込んでしまいそうなバキュームカー。接吻はロックンロールだ。どこへ。この世の外ならどこへでも。
ロックンロールは何者も救済しない、いやさない。ロックンロールが言っていることはひとつだけだ。おれはお前が壊れるまでやりたい。そう、あの感じだ。 いまだ名付けられていない精神状態、G7とC7とDの三つのコードだけで、腰と膝が拍子を打ち出す。何もかも叩きのめしてやりたいような、ぶっ壊してやりたいような、反対側までぶち抜いてやりたいような、 顔の皮をひっぺがしたいような、何もかもにも見捨てられたような快感、この世の出来レースに唾をかけたいような、二日酔いの朝の嫌悪感のような、ざらざらした感情、それがロックンロールだ。
やがてほどかれた君の真空がたちあらわれるとき、E♭のロックンロールが鳴り響くだろう。 バンドががたぴしと演奏するロックンロールが。E♭とA♭のたったふたつのコードで、どかすかと調子っぱずれに。歌詞はよく聞こえないし、誰も聞こうとしない。涎をだらだら流したヴォーカリストのざらしとした声。誰も歌詞なんか理解しようとしない。ベースは地を這う大蛇のように。ドラムは百円入れたら作動する機械のように。農夫の鍬のようにリフを刻むギター。足踏みと投げつけられるビール缶と手拍子とブーイング。悲鳴をあげるリードギター。モニター・スピーカーに貼られた曲順表。「あっ」が一曲目。」「がたごと」「どうしようかな」「うまのほね」「ねたのよい」「ちまつりブギ」「トンネル天国」「夢うつつ」「犬のおまわりさん」「手首のきずはおととしの」「らりるれロックンロール」。 ハウリング、ジィジィいうアンプ。マーシャルの二百ワットを壁のように積んで。天然パーマの頭を短くまとめて、眉毛を剃って目の下をくまのようにメイクしたギタリスト。腰まである髪の毛をふりたてて踊り狂う元ダンサーのボーカリスト。踊りの合間のヴォーカル。濃い目ばり。キーもヘチマもない。P・Aもへったくれもない。押し寄せる聴衆。なぜかまぎれこんだ浮浪者。押し倒され踏みつけられる女の子。
夜はロックンロールの領土、EとA7とB7の領土。夜はエイト・ビートの領土。スネアとハイハットとバスドラムの領土。ブギウギの領土。大津波のような音の壁の領土。ミキシング・テーブルと酸欠の領土。バッド・チューニングとしゃがれ声の領土。音を貪り食うハイエナどもの領土。 ハウリングとディスコードとステージ・ドリンクの領土。切り裂く音と刻む音とうねる音の領土。そう、夜はロックンロールの領土。そして、すべてはロックンロール。音楽はロックンロール。ロックンロール以外に音楽はなく、あってもそれはロックンロールの影のようなもの。 そしてすべてはロックンロール。ロックンロールとはひとつの精神状態のことだ。名づけられたことのない精神状態。
文学はロックンロールだ。 アンドレ・ブルトンはその『第一宣言』において、セリーヌはその無法な毒づきにおいて、ヘンリー・ミラーは『ネクサス』『セクサス』『プレクサス』のはらむビートにおいてロックンロールだ。 ジョイスは自己創造と破壊において、ウィリアム・ブレイクは創世術において、W・バロウズは『裸のランチ』という動詞において、トリスタン・ツァラはその美しい名前においてロックンロールだ。文学は骨の太いロックンロールだ。 クライブ・バーガーは『血の本』でバスタブ一杯の血を用意し、ジャック・リゴーは『不在』において、アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグは夜への通底によってA・ネーポンは『非在』において、アントナン・アルトーはペストの名において泉鏡花は植物描写において、T・S・エリオットはわらの詰まり具合によって、アレン・ギンズバーグはバロウズとの『麻薬書簡』においてロックンロールだ。ロックンロールとはまだ名づけられていないある種の精神状態のことだ。
こんな感じ。
日本語で、ここまでロックな文体が存在するのは見たことがない。
 
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