リンダ・ロンシュタット。
[デスペラード:歌詞と訳詞]
Desperado,
why don't you come to your senses?
You been out ridin' fences for so long now
ならず者のあなた
ずっとフェンスに座り込んでないで
そろそろ考え直したら?
Oh, you're a hard one
But I know that you got your reasons
かたくなな人ね でもわかるわ
These things that are pleasin' you
Can hurt you somehow
喜びと思ったことが自分を苦しめることも あるものね
Don't you draw the queen of diamonds boy
ダイヤのクイーンは引いちゃだめ
She'll beat you if she's able
きっとあなたはボロボロになる
You know the queen of hearts
is always your best bet
ハートのクイーンなら
一番なのに
Now it seems to me, some fine things
Have been laid upon your table
すぐ手元に幸せは あるように見えるのに
But you only want the ones that you can't get
あなたはいつも ないものねだりばかり
伊勢佐木町の片隅にアメリカンポップスがよくかかるライブ・バーがあって、一時そこのハコバンをしていたことがある。
「It's So Easy」とか「ルーズ・アゲイン」がよく流れていた。壁には「Simple Dreams」のLPが飾ってあって、ジャケットの色っぽいリンダの写真にずっと見とれていたのを覚えている。たぶん77年か78年だったんだろう。
ドゥービーとかのハードな曲は防音上できなかったんで、もっぱらイーグルスやカーラ・ボノフなんかの、ちょっと静かめのウェストコーストサウンドを演奏していた。
当時はやっぱり、リンダの曲は外せない。ボーカルをしてくれてた娘は、「根岸のリンダ」というえらくローカルな通り名をもった、地元ではちょっとした有名人で、なかなかリンダする歌声を聞かせてくれた。
背も高く、長い黒髪。ジーンズにブーツ、カントリーっぽいシャツ。ファッションも雰囲気ばっちりなんだけど、ルックスはかなり細面。リンダの夢見るような童顔丸顔とはだいぶちがいながらも、シャープなオトナの美人という感じだった。
けっこう常連のファンもついて、バンドは順調だったんだけど、ある日、大変なことが起こった。この曲「Desperado」をプレイするときさ。
ピアノのイントロを聞いている時から何かヘン。「♪Desperado~」(ならず者のあなた…)と歌い出したとたん、大粒の涙をボロボロと…。サビをむかえるときには、マイクをもったまま座り込んでしまい、凍りつく客席には、ただ号泣しか届かず…。
あわてて肩を抱いて、外に連れだした。残ったメンバーは仕方なく、インストで「ジュリエット」とかやってたらしい。
「がまんできなかったのよ…」
とりあえず入った居酒屋で、生ビールを一気に空けたその娘は、大きな瞳を真っ赤にして、つぶやいた。
つらい恋を、していたらしい。
「あのろくでなし。あたしっていうハートがありながら…」。
そうか、彼女のならず者は、ダイヤのクイーンにぞっこんだったんだ。
「そりゃ、無理だ。それじゃあ、あの歌はまともに歌えるわけ、ないよね」
「当たり前よ。少しは気、使ってよ」
「いや、だって、まさかそんな…」
「うるさいわよ。…もう、朝まで飲むからね」
「はいはい」
たしか3つぐらい年上だった。でも、子どもみたいな泣き顔がなにか可愛くて。
いつ果てることもないグチ話を、ずーっと聞いていた。
夜はまだ、これから…。
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