12月 10, 2010

またひとりぼっち

12月 10, 2010
「だからあの歌はやめとけって言ったのに」
「…うるさいわよ」



[ Lose Again の歌詞と訳詞]
Save me,
Free me from my heart this time.
救いを ください
自由にしてほしい この心の牢獄から

The train's gone
Down the track and I've stayed behind.
みんな行ってしまった ずっと遠くへ
私はここに残ったの ひとりぼっちで

But nothing can free me
from this ball and chain
だけどこの苦しみを 癒してくれるものは何もなかった
I've made up my mind
I would leave today.
だから決めたの 私もきょう旅立つって

But you're keepin' me goin'
でもあなたは そんな私を止めてくれない
I know it's insane
苦しくてたまらない
Because I love you
And lose again
あなたを愛してるのに またひとりぼっちなの

「この歌を歌いきれたら、忘れられると思ったんだもの」
鼻をズルズルとすすりながら、『根岸のリンダ』こと恵子がつぶやく。

恵子と僕は、伊勢佐木町のライブハウスでいっしょにハコバンをしている。ウェストコーストサウンドが中心で、リンダ・ロンシュタットのカバーはけっこう人気がある。

こないだから悪い男に引っかかっているらしく、元気がない。先週、ステージでいきなり号泣したときには、本当に参った。

「『デスペラード』は歌えるようになったんだけどなー」
「まあ努力は認めるけど、まだ忘れられないんでしょ? なにもステージでそんなことにチャレンジしなくたって」
「うん…」
「バックのおれたちとか、お客さんの身にもなってよ。『デスペラード』が無事終わってホッとしてたのに、この歌のときは、ホントにすごかったよ。まるで怪獣みたいな号泣で…」
そう、きょうもステージは中断して、居酒屋で反省会中というわけ。

「ちょっとはプロ意識みたいなものをさ…」
「うん…ごめん…」

しょんぼりしてる恵子を見てると、ちょっといたたまれなくなってきた。
3つ年上なんだけど、あぶなっかしくて。ほっとけない感じ。
18歳の浪人生にこんなに心配させて、
泣き酒まで付きあわせて。
まったくもう…。

「…美人がだいなしだよ…」
「え?」
「え? いや、せっかくかわいいのに…」
「え? え?」
(あ、やばい、つい)

まずい、こんな流れで告白しちゃうなんて…。
これはやばい。

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